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覚悟の決断
【15年持った看板】 3月、私は大きな手放しをした。 2013年に賞をいただき、長年私の代名詞だった「野菜ソムリエ」の冠を捨てる。 愛着も誇りもあった。 けれど、その看板に安住していては、15年前の自分を超えることはできない。 リブランディング それは、自分自身に「未完成」を突きつける儀式だった。 【世阿弥と幽玄】 辿り着いたのは、学生時に研究した世阿弥の「幽玄」だった。 目に見える派手さではなく、余白の中に宿る深い美しさ。 和歌山の豊かな食材、その生命力をどう引き出すか。 言葉で飾る「野菜ソムリエ」としての説明を捨て、一皿の佇まいだけで客の魂を揺さぶる。 そんな表現者としての道を歩み始めた。 【引き算の美学】 かつての私は、何かを足すことで自分を証明しようとしていた。 今は違う。不純物を削ぎ落とし、素材が持つ「生命力」をむき出しにする引き算の美学。 それは、平和酒造さんの酒作りとも共通する精神だ。余計なものを引いた先に残る一滴と一皿の共鳴。 それこそが、私が追い求める究極の姿だった。 【食材の声を聴く】 野菜も、魚も、生きてい

osamu N
4 days ago2 min read


【15年のスペシャリテ】余白を削ぎ、本質を研ぐ「鴨肉のロースト~アストゥリアス風~」
【スペシャリテ:カモ肉のロースト~アストゥリアス風~】 7月の15周年という節目を前に、私は今、自らの料理人としての歩みを一本の包丁のように研ぎ直しています。 その研ぎ澄まされた刃の先にあるのが、当店の絶対的スペシャリテ「鴨肉のロースト~アストゥリアス風~」です。 この料理と向き合うとき、私が最初に行うのは、徹底的な「削ぎ落とし」です。 鴨という素材が持つポテンシャルを最大限に解放するために、純粋な旨味を遮るあらゆる雑味を徹底的に排除する。皿の上に一切のノイズを残さないための、静かで妥協のない引き算。 しかし、それは単なる「引き算」で終わりではありません。 完璧な火入れによって肉本来の力強い生命力を閉じ込めたローストに、私は一筋の鮮烈な色を添えます。それが、赤ワインとリンゴだけで仕立てる、酸味と甘み豊かな「アストゥリアス風ソース」です。 多くの要素を詰め込んだ複雑なソースはいりません。 鴨の純度を高めたからこそ、赤ワインの深みとリンゴの甘酸っぱさという、厳選された最小限の調和が、肉の官能的な旨味を爆発的に引き立てるのです。 雑味を引くことで、本質

osamu N
7 days ago2 min read


突破口は「海」に。野菜家という名の本当の意味
【料理人を脱ぐ時間】 日に一度、包丁を置いて海へ出る。 300日を海で過ごすプロの釣り師としての自分 。そこには「店主」としての計算も「料理人」としてのプライドもない。 ただ、潮風に吹かれながら魚を追い、最高の状態で仕留める。 この純粋な「好き」の延長線上に、思わぬリベンジのヒントが隠れていた。 【平和酒造との出会い】 釣ったばかりの魚を、平和酒造の酒で流し込む。 和歌山の海、和歌山の水、和歌山の野菜。 それらが細胞レベルで共鳴する感覚。 理屈じゃない、ただただ「美味い」。 15年前、机の上でこねくり回していたペアリングの正解は、店の中ではなく、波止場や船上という「現場」に転がっていた。 【誕生:野菜家さい釣り部】 一人の遊びが、いつの間にか23人の熱狂に変わった。 「野菜家さい釣り部」 オーケストラの奏者から蔵人まで、職業も世代もバラバラな仲間たちが、魚と酒という共通言語で繋がる。 そこにあるのは、かつての店に足りなかった「圧倒的な楽しさ」だった。 この熱量が、店の景色を変え始める。 【ビジネスの壁を壊すもの】 どれだけマーケティングを駆使して

osamu N
May 132 min read


1日10名様、その「限定」に込めた誠実。ランチ営業のご案内
【ランチは一日10名様限定】 和歌山市の片隅で「野菜家さい」が産声を上げてから、この夏で15年。 これまで多くのお客様からお問い合わせをいただいておりました「ランチ営業」について、改めて私たちの想いをお伝えします。 私たちが提供するのは、単なるお昼の食事ではありません。 当店のランチは、「1日10名様限定」という形をとらせていただいております。 なぜ、数を絞るのか。 それは、素材の鮮度と調理の質を、私が納得できる極限まで高めたいからです。 「野菜家」として向き合う地元の瑞々しい野菜、そして和歌山の海がもたらす生命力あふれる魚介。 それら一つひとつの素材が持つ「真価」を引き出すためには、私の目が届く範囲、私の手が届く数でなければならない。 それが、15年という月日を経て辿り着いた、お客様への誠実さの形です。 「和歌山で本当に美味しいランチを、落ち着いた空間で、ゆっくりと愉しみたい」 そんな、日常の中に「静かな贅沢」を求めるお客様の声にお応えするための、特別な枠をご用意しました。 昼も夜も、私たちの掲げる哲学は変わりません。 余計なものを削ぎ落とし、

osamu N
May 112 min read


敗北の記憶とその背景
【15年前の惨敗】 15年前、和歌山で産声を上げた時のコンセプトは「日本酒×スペイン料理」 野菜ソムリエが厳選した素材を地元の名酒で流し込む。 理想は完璧だった。 だが蓋を開ければ惨敗。 少人数のお客様の7割がノンアルコール。 「スペイン料理に日本酒?」という冷ややかな空気に、理想は叩き潰された。 【土俵にすら立てない日々】 和歌山という保守的な土地柄、そもそも日本酒を提案する土俵にすら立てなかった。 団体客は別として、日常的に「酒と料理のペアリング」を楽しむ文化は、当時の私には遠すぎた。 自分の信じる「美味い」が誰にも届かない無力感。 あの時飲み込んだ悔しさが、今も私の指先を動かす原動力だ。 【正解を探し続けた夜】 「早すぎたのか、それとも間違っていたのか」 営業後のカウンターで、一人そんなことばかり考えていた。 和歌山の豊かな食材がある。 平和酒造さんの素晴らしい酒がある。 それなのに繋がらない。 自分の力不足を棚に上げ、土地のせいにしてしまいそうな自分と戦う夜が、創業当時の私の日常だった。 【コロナ禍という更なる逆風】 15年続く道のりには

osamu N
May 72 min read


プロローグ
一皿の料理が繋ぐ縁を大切に、皆様に感謝を込めて。今夜も至福の時を分かち合う、私たちの物語が続きます。 15年前、和歌山のこの場所に店を構えたとき、私の心には希望しかなかった。 大学で日本文学を専攻し、放浪する「道々の人達」に思いを馳せていた私が、食の世界で見つけた「居場所」。 スペイン・バスクの美食に魅せられ、「野菜ソムリエ」という看板を掲げ、 華やかなメニューを並べていたあの頃。 しかし、現実は残酷でした。 賑わう店内、響く笑い声。 一見すれば「成功」していたのかもしれません。 けれど、私の心は削られていきました。 自分が本当に届けたい「素材の真価」と、 巷に溢れる「安価な消費」としての食事とのギャップ。 そして、自身の技術が、素材の生命力に追いついていないという、圧倒的な無力感。 まるで、霧の深い夜の海で、羅針盤を失ったような感覚でした。 私は、自分が信じた「美食」という戦場で、一度は完全に敗北していたのです。 なぜ、かつての私は「野菜ソムリエ」という肩書きに縋らざるを得なかったのか。 そして、なぜ今、それを脱ぎ捨てることができたのか。...

osamu N
May 72 min read


連休の終わりに、優しい「火入れ」を
スペインバルの定番、ジャガイモ入りのオムレツ「トルティーリャ」 GWもいよいよ終盤。 和歌山の街も、どこか穏やかな熱を帯びているように感じます。 この数日間、多くのお客様の笑顔に触れ、 改めて「食」が持つエネルギーの大きさを実感しています。 さて、連休の疲れが少しずつ顔を出すこのタイミングで、 私がお客様に召し上がっていただきたいのは、 派手なメインディッシュではなく、一見地味な「トルティーリャ」です。 ジャガイモと卵。 どこにでもある素材を、どこにもない一皿に変えるのは、 15年繰り返してきた「火入れ」の微差に他なりません。 焦がさず、けれど香ばしく。 重すぎず、けれど満足感のある厚みを。 「野菜家」という名に恥じない、素材への誠実なアプローチ。 それは、お客様の身体を労わる「引き算」の優しさでもあります。 デザートのクレマカタラーナを割りながら、 楽しかった連休の思い出を語り合う。 そんな「日常に戻るための準備」のような時間を、 私たちの店で過ごしていただければ幸いです。 明日5日のディナーまで、全力で包丁を握ります。 (※6日はお休みをいた

osamu N
May 41 min read


時化の海に、料理人の意地を置く
市場に魚が並ばないからと、妥協することはありません 雑賀崎の猟師さんたちが、悔しそうに網を畳んでいる。 悪天候、そして容赦ない原油高。漁に出られない理由はいくらでもある。 けれど、私のカレンダーには、今日この場所を予約してくださったお客様の名前がある。 「魚がない」 その一言で片付けるのは、15年積み上げてきた「野菜家」としての矜持が許さない。 だから私は、竿を持つ。 年間300日以上、この海を見続けてきた経験が、潮のわずかな変化を教えてくれる。 魚の居場所を探り、ルアーを送り込み、静かにその時を待つ。 これは単なる趣味の釣りではない。 海と対話し、自然の恵みを強引にではなく、丁寧に「分けてもらう」ための儀式だ。 こうして手にした一匹は、市場で買ったものとは明らかに「顔」が違う。 今夜、皿の上に載るのは、 和歌山の海の厳しさと、それを乗り越えた一人の男の意地です。 潮の香りと共に、皆様のご来店をお待ちしています。

osamu N
Apr 301 min read


味に「余白」を。15年目のトマトとアルバリーニョ
契約農家さん特選 味濃いトマト この店を開業し15年、常に自問自答してきたことがあります。 「お客様が最後の一口を飲み込んだとき、何が残っているべきか」 その答えの一つが、この「味濃いトマト」にあります。 使用しているのは、和歌山の契約農家さんが15年かけて当店のために育て上げてくださったトマト。 驚くほど濃密なその味には、塩も砂糖も、一切の調味料を足す必要がありません。 私は、このトマトの完璧な自立を尊重し、あえて味を完成させない「余白」を残しました。 その余白を埋めるのは、料理人の腕ではなく、お客様の五感です。 キリッとした酸と、ほのかな塩味(ミネラル)を感じる白ワイン「アルバリーニョ」を一口含んだとき。 あるいは、隣に座る大切な方と「美味しいね」と目を合わせた、その瞬間。 そのとき初めて、この料理は完成します。 皿の上にも、味の上にも、そして店内の空気の中にも、私たちは「余白」を大切にしています。 それは、お客様が主役として、その時間を愉しむための自由な空間です。 GW前の、活気ある火曜日。 忙しい日常に、少しだけ「味の余白」を取り戻しに来

osamu N
Apr 281 min read


「遊び」が料理を研ぎ澄ませる
第5回野菜家さい釣り大会 釣り大会を終えて、改めて感じていることがあります。 私が料理に「引き算」を求めるようになったのは、実は海の上で感じる「素材の純度」を知っているからです。 昨日の大会でも、多くのメンバーが素晴らしい釣果を上げてくれました。 しかし、それ以上に素晴らしいのは、和歌山の食文化を愛し、楽しもうとする彼らのマインドです。 彼らとの交流は、私の創作意欲を常に刺激し、料理の幅を広げてくれます。 「野菜家」でありながら、海の豊かさを知る。 この両輪があるからこそ、今の「さい」があります。 大会の余韻と共に、今週も包丁を握ります。 釣り談義に花を咲かせるもよし、静かに料理と向き合うもよし。 月曜日、また新しい一週間が始まります。

osamu N
Apr 261 min read


飾らないことの豊かさについて
良い素材があれば、それ以上何が必要でしょうか。
手を加えるのは、その素材が持つ「声」を届けるための、最低限の橋渡しでいい。

osamu N
Apr 231 min read


「野菜家さい」という名のミスディレクション
和歌山の柔らかな陽光を浴び、朝一番の澄んだ空気の中で摘み取られたハーブ。 「野菜家さい」 この店名を聞いて、多くの方は「ヘルシーで優しい味」を想像されるかもしれません しかし、私たちの本質は少し違います 私たちが目指しているのは、単に「野菜を食べる場所」ではなく、「素材の生命力に、驚き、圧倒される場所」です ―― 素材の真価は、足し算ではなく「引き算」で決まる 過剰なソースで飾るのではなく、余計なものを削ぎ落とし、その素材が持つ「香りの輪郭」や「火入れ1秒の差異」を追い求める。それは極めてストイックで、静かなる技術の探求です 噛み締めた瞬間に広がるトマトの柑橘のような香り、炭火で引き出された肉の野性味 「優しい」ではなく「力強い」 「ヘルシー」ではなく「本質的」 この心地よいミスディレクション(裏切り)こそが、15年間私たちが磨き続けてきた唯一無二の価値です

osamu N
Apr 221 min read


【GW先行予約のご案内。素材の『純度』に浸る】
私が目指すのは和歌山の土と海が育んだ、 素材そのものが持つ「正解」を最短距離でお届けすること。 契約農家から届いたばかりの、春の主役たち 。 暗がりに浮かび上がるその色彩は、生命力の証です。 当店の料理に、過剰なデコレーションはいりません。 雑味を徹底的に削ぎ落とし、素材が持つ「芯」の旨味だけを際立たせる。 その「濁りのない味」こそが、私たちが15年守り続けてきた格別なご馳走です。 賑やかな連休だからこそ、喧騒を忘れて、素材の純度に浸る「静かな贅沢」を選びませんか ■ GW(4/29〜5/6)のご案内 土曜、祝日はランチお休み ディナーは6日のみお休み

osamu N
Apr 201 min read


【文学×スペイン。削ぎ落とした先に残る1行の真実】
一皿一皿に命を吹き込む、素材の良さを引き立て、美しく盛り付ける工程は、料理が完成する最後の魔法です。お客様の笑顔を思い浮かべながら、心を込めて仕上げる現場の臨場感をお届けします。 派手な演出も、過剰な味付けも、当店の料理には必要ありません。 私が火の前に立ち続けるのは、 素材が本来持っていた、清らかな「声」を聞き届けるためです。 余計なものを引き算し、最後に残った1行の真実だけを、皿に綴る。 喧騒を離れた、没入的な時間の続きは、ホームページの「ABOUT US」ページにまとめています。

osamu N
Apr 161 min read


【和歌山での歓送迎会、貸切やご予算の相談を承ります】
和歌山の豊かな大地が育んだ旬野菜を主役に、素材本来の彩りと生命力を一皿に凝縮しました。特製出汁でお米の芯まで旨味を染み渡らせ、野菜の甘みが際立つよう雑味を排してシンプルに炊き上げています。 4月も中盤に入り、職場や大切な仲間との歓送迎会のご予定はお決まりでしょうか。 「ありきたりな宴会ではなく、本当に美味しい料理で感謝を伝えたい」 そんな幹事様のご要望にお応えします。 ■ 幹事様に選ばれる3つの安心 【少人数限定・素材特化プラン】 8名様までの少人数予約では、店主がその日の素材が持つ「本来の甘みや香り」を極限まで引き出すため、雑味を排した繊細な火入れで一皿を仕上げます。素材の個性が際立つ、澄んだ味わいをご堪能ください。 明朗な予算設定:飲み放題付きコース 5,500円(税込)〜 個室完備:少人数でのディナーや女子会にも最適な、落ち着いたプライベート空間。 ●歓送迎会特典|ボトルワイン1本サービス ・利用条件:飲み放題付きコース 6,000円以上、 6名様以上でのご利用 現在、コースをご予約のグループに、料理の「引き算の美学」を引き立てる厳選ワイン

osamu N
Apr 151 min read


鮮度という幻想を排し、素材の骨格を射抜く
和歌山の豊かな恵み。 その「鮮度」という言葉の裏側にある、真の食べ頃をご存知でしょうか。 野菜であれば、収穫から時間が経ち、酸と甘みが絶妙なバランスを生む刹那。 魚であれば、ATPが旨味へと昇華される細胞の頂点。 私が行き着いたのは、世阿弥が説く「不味之味」 作為を捨て、装飾を削ぎ落とした先に現れる、素材そのものの骨格を皿に置きます。 私たちの料理は、単体では完成いたしません。 ランチでは炊き立てのご飯と。 ディナーでは選び抜いたワインと。そして何より、大切な方との語らいがあって初めて、最後のピースが埋まります。 本日4月9日 春の静かな境地を、一皿に込めて。 特別な日の「美味しいの形」を、あなた自身で見つけてみませんか。

osamu N
Apr 91 min read


【今週の空席状況と、お花見パエリア弁当のご案内】
今週も契約農家さんから、瑞々しい春野菜が届いています。特に今朝届いたトマトは、驚くほど澄んだ香りが立ち上っています。 ■ 団体様・貸切のご案内 今週平日は、10名様前後の団体様や貸切のご相談が可能です。「落ち着いた空間で、身体に優しい料理を囲みたい」という幹事様、まずはお電話でご希望をお聞かせください。 ■ お花見パエリア弁当(最終受付間近) 春の彩りを詰め込んだ特製パエリア弁当。団体様向けの大型注文は、今週が最終の受付となります。出汁の純度にこだわった、冷めても美味しい本物の味を外でもお楽しみください。

osamu N
Apr 71 min read
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