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15年の哲学 / 料理の真髄

  • Writer: osamu N
    osamu N
  • 9 minutes ago
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【平和酒造:紀土 夏の疾風】
【平和酒造:紀土 夏の疾風】

今年の夏で、野菜家さいは15周年を迎えます。


この節目を前に、私はこれまで15年間、厨房の奥底に静かに伏せてきた、ある手法についてお話ししようと思います。


正直に言えば、わざわざ言葉にする必要はないと思っていました。


職人が裏でどれほど手を尽くそうとも、お客様が「美味い」と微笑んでくだされば、それで完結する世界だからです。


しかし、15年という月日を経て、私たちの店が目指す「引き算の美学」の正体を、本物を愛してくださるお客様にしっかりと手渡したいと思うようになりました。


当店には、一言で説明できる「決まったレシピ」が存在しません。


正確に言えば、皿の上に載る素材は同じでも、その味付けの純度はお客様によって変えています。


私はいつも、カウンターの向こうで皆様が何を飲まれているかを、凝視しています。


たとえば、同じスペインの赤ワインであっても、 骨格がしっかりとしたテンプラニーリョ種を楽しまれている方には、肉の余分な脂を限界まで削ぎ落としつつも、ソースにわずかな深みを持たせる。 一方で、華やかな果実味を持つガルナッチャ種を傾けている方には、添える地野菜の苦味をアクセントに効かせ、ワインの甘みを引き立たせる。


料理に飲み物を合わせる(ペアリングする)という一般的な常識を、私は信じていません。 それは、料理人のエゴの押し付けになりかねないからです。


正解は、常に「お客様が今、愉しまれているグラスの中」にあります。


私は料理人として、そのグラスが持つ波長に、一皿の味付けや塩のあて方を、即興で完全に調和させたいのです。


今夜、カウンターに並ぶのは平和酒造様の日本酒「夏の疾風」。


初夏の風のように瑞々しく抜けるこの名酒を手にされたなら、私の手は自然と動き、料理の「出汁の旨味」を静かに底上げし、有田川町産ぶどう山椒が持つ「爽烈な清涼感」を最大限に響かせる仕様へと、一皿を組み替えます。


雑味を引き、お客様の喜びに合わせるための、瞬間の足し算。


15年間、黙ってやり続けてきた私の、これが最大の執念です。


今夜も、あなたのグラスに、私のすべてを合わせるためにお待ちしております。


【ランチのご案内】 昼のひとときにも、職人の即興の調和を。 1日10名様限定・ランチのご予約は12時30分までにお越し頂ける方のみ、お電話、もしくはLINEにて承っております。12時30分以降のご予約は、当日お電話でお申し込みください。

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